研究概要 |
1.ゲノム遺伝情報の計算機を用いた解析のために開発したソフトウェアSISEQについて,機能を増強する改良を続けた。 2.SISEQライブラリをベースとして昨年度に開発したソフトウェアを用いて,葉緑体とシアノバクテリアのGC skew解析を行った。これは多くの細菌では,きれいな折り返し点を生じ,複製起点を推定するのに有効とされているが,シアノバクテリアSynechocystisとAnabaenaのゲノムおよび葉緑体ゲノムのいずれにおいても,単純なプロットが得られず,複製起点の推定は難しかった。シアノバクテリアとその未裔である葉緑体のゲノムの複製の機構が,他の細菌とは異なる可能性も考えられる。 3.シアノバクテリアのいくつかのゲノム配列が公開されたため,これにあわせて,比較ゲノム解析を行った。Anabaena,Nostoc,Synechocystisの3種の間で共通して存在する遺伝子の種類を,BLASTプログラムの出力から比較的緩いカットオフ値を用いて推定した結果,1343グループのタンパク質遺伝子が3種に共通であること,それぞれの種に特有の遺伝子グループが25%程度存在すること,AnabaenaとNostocに共通する遺伝子グループが800グループあること等がわかった。さらに,3種に共通なもののうちで,他のシアノバクテリアや植物にも共通なものが511あったが,そのうちで238グループは非光合成生物も含めて共通なものであるので,光合成生物に共通なのは273グループであった。 4.2年間の研究により,シアノバクテリアから葉緑体に向けての進化に関して,情報科学的な解析が進み,その成果をいくつかの論文として公表した。
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