モデル植物シロイヌナズナの主根を材料に、成長速度と細胞体積の空間プロフィールを測定する方法を開発した。すなわち、根にグラファイト粉を塗沫してその移動速度から成長速度の空間プロフィールを算出し、直ちにこれを1)固定・透明化、あるいは2)固定・包埋・薄切して顕微鏡観察を行い、根の様々な位置で(同心円上に配置された)各細胞層の内径・外径、細胞の長さを測定する。これらのデータをもとに、根の先端から任意の地点までの細胞列部分体積とこの地点での細胞体積との関係、つまり細胞体積の空間プロフィールを求める。この方法によって得られた成長速度と細胞体積の空間プロフィールは、少なくとも定常的成長下にある根の皮層細胞列に関する限り、私たちの数理モデル(器官は細胞数に比例する資本を有し、器官体積に依存する維持のための消費分を差し引いた残りを、細胞増殖と器官成長に投資すると仮定し、これを数学的に表現した微分方程式)とよく一致した。培地にマンニトールを加えて水ポテンシャルを低下させた場合にも、数理モデルは成長データと符合し、さらにパラメータの比較から水ポテンシャル低下が維持コストの上昇をもたらすことも判明した。内鞘細胞列では、皮層細胞列と異なり、成長データが数理モデルに適合せず、成長の停止が余剰資本の払底によらない可能性が示された。
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