研究概要 |
本研究の目的は膨圧変化が成長制御の一つの基本的な機構として働いているかを解明することにある。本年度は主にプロトプラストを用いた研究を行った。まず、インゲンマメ葉枕を用いた研究を進展させ、ABAはイオンの放出を促してプロトプラストの収縮反応を誘導すること、この反応において陰イオンチャンネルが重要な役割を果たしていること、一方、オーキシン(IAA)はイオンの取り込みを促してプロトプラストの膨潤反応を誘導することを明らかにした。これまで得られた結果を論文にまとめた(投稿、審査中)。次に、エンドウの茎(表皮組織)から単離したプロトプラストを用いてIAAの作用を調べ、葉枕のプロトプラストと同様にIAAに反応して膨潤することを明らかにした。この結果から、IAAによる膨潤反応はIAAの成長促進作用に関与していると考えられる。また、得られた結果は膨圧の変化によって成長調節が起こるという仮説を支持している。更に、IAAによる膨潤反応は外液からのイオンの取り込みによることを明らかにし、そのイオン取り込みには、プロトンポンプ、内向き整流性のK^+チャンネルとCl^-/H^+ symporterが関与していることを示す結果を得た。また、膨潤反応は外液のCa^<2+>に依存しないことが分った。したがって、外液のCa^<2+>はIAAのsecond messengerとしては働いていないことになる。すでに、エンドウ茎のプロトプラストはフィトクロムを光受容体とする反応によって膨潤すること、この反応は外液のCa^<2+>に依存することを明らかにしている(Long and Iino,2001)。フィトクロムとIAAによる膨潤反応は異なったメカニズムによると考えられる。
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