新型光合成系をもつアカリオクロリスについて、光化学系1反応中心を精製しクロロフィルdの2量体(P740)が光化学反応をしていることを示した。これは酸素発生型光合成生物の中では始めてのクロロフィルa以外の反応中心で、単一起源と思われてきた植物型光合成の起源に関する興味深い発見であった。さらにこの生物について酸素発生系=光化学系2についての研究をおこなった。光化学系1の反応中心P740を酸化して反応できない状態にして、光化学系2の光反応のみをレーザ閃光照射により測定した結果、720nmに鋭い吸光度変化を観測した。これはクロロフィルdが光化学系2でも反応中心であることを示唆するものである。さらに光化学系2反応中心の単離を試み、光化学系2の多い色素タンパク質標品を得た。この標品のレーザ閃光照射では、クロロフィルdの光酸化状態ではなく励起三重項状態の吸光度変化が720nm付近にみられ、クロロフィルaの吸収があるはずの680nm付近には変化がみられなかった。さらに蛍光寿命測定を行ったが、クロロフィルaの長寿命蛍光はほとんど観測されずクロロフィルdの蛍光のみが観測された。これらの結果はこの生物のもつ酸素発生系がクロロフィルdの2量体を反応中心としてもつことを示し、既知の全ての酸素発生生物とは違う「クロロフィルdをつかう酸素発生型光合成」であることを示している。これらの知見は植物型酸素発生光合成の進化を考える上で全く新しい情報である。
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