研究概要 |
群体性ボルボックス目のボルボックス科の中では異形配偶が進化した後、Eudorinaから細胞数が増大してPleodorina、更にVolvoxという一方向的進化の可能性が示唆されているが(Nozaki & Ito1994,J.Phycol.)、その後実施されたrbcL遺伝子1128塩基対、更にatpB遺伝子1128塩基対を付加した系統解析においても支持または否定されなかった(Nozaki et al.1995,1999,J.Phycol.)。本年度、psaB遺伝子1494塩基対、psaA遺伝子1491塩基対、pabC遺伝子780塩基対をrbcL-atpB遺伝子に付加した計6021塩基対に基つく47OTUsの系統解析を実施し、形態学的データに基づく群体性ボルボックス目の配偶子に関連する進化仮説を検証した。その結果、1994年の形態学的データに基づく系統解析と同様にテトラバエナ科が他の群体性2科からなる単系統群に対する姉妹群であるとNJとMPの両者の解析で高いブートストラップ値を伴って示唆された。従って、これら群体性の3科全体は単系統であり、共通の祖先が群体性を獲得したことが推測される。更に群体性獲得後、配偶子の接合構造がuniateral mating papillaeからbilateral mating papillaeへ進化し、細胞数の多いボルボックス科とゴニウム科の共通の祖先が進化し、ボルボックス科で雌雄性が誕生したものと推測された。 また、雌雄性を獲得する段階まで進化していない群体性ボルボックス目の同形配偶のGoniumとPandorinaの配偶子の接合過程を細胞学的に観察した。その結果、両配偶子の葉緑体DNAが接合後24時間の段階でも存在することがDAPIで蛍光染色して明らかとなった。このことは近縁の単細胞生物Chlamydomonas reinhardtiiとは基本的に異なり、両者は配偶子の接合構造の差異ばかりでなく、母性遺伝に関しても異なる進化段階であることが示唆された。
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