研究概要 |
研究代表者百々幸雄と分担者瀧川渉が平成13年1月14日から2月4日までの22日間、ロンドンの大英自然史博物館に出張し、スピタルフィールズ骨格資料を調査した。スピタルフィールズ骨格資料は、17〜19世紀ロンドン郊外のスピタルフィールズ地区に居住していたフランス系英国人のもので、約1000体の骨格が教会納骨堂に埋葬されていた。教会の改築にともない大英自然史博物館のモレソン博士が中心になり発掘調査が進められ、その遺骨が現在大英自然史博物館に保管されている。 このスピタルフィールズ骨格資料の特徴は、墓碑銘から約400体の名前、性別、年齢、生年月日、死亡年月日、血縁・婚姻関係が判明していることである。我々はモレソン博士と共同で、成人407個体、未成人49個体の頭蓋につき、前頭縫合、眼窩上神経溝、眼窩上孔、横後頭縫合痕跡、後頭乳突縫合骨、頭頂切痕骨、顆管開存、舌下神経管二分、鼓室骨形成不全、ヴェサリウス孔、頬骨横縫合痕跡、頚静脈孔二分、横洞溝左優位、顎舌骨筋神経溝骨橋の14項目の形態小変異の出現状況を調査した。 家系が判明している資料のうち、親子の組み合わせが43組、兄弟・姉妹が37組あったが、これら第1度血縁者をもとに予備的に遺伝率の推定を行ったところ、顎舌骨筋神経溝骨橋と眼窩上孔が遺伝率ほぼ1,舌下神経管二分が約0.6であった。 今後すべての項目について遺伝率の算定を行う予定であるが、遺伝率のみでなく、形態小変異の家族性発現をより明確に判定するため、より簡単で理論的な統計量の開発も試みてみたい。
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