多重散乱された光の干渉による光メモリー効果は、(1)蛍光を発し、(2)光反応を起こし、それによって蛍光強度が変化する光反応材料が、(3)光を多重散乱する媒体中に入っている、という条件を満たす記録媒体で起きる効果である。このような媒体に入射した光の波長と波面は、不規則な媒質内部で多重散乱され、さまざまな散乱経路を経た光が干渉しあって作る3次元的な干渉パターンとして、光反応材料によって記録される。この効果の諸特性を定量的に研究するために、散乱体として酸化チタン微粒子を用いた記録媒体を作製した。光反応材料としては、フォトクロミズムを示す有機分子フルギドを用い、これと酸化チタン微粒子をMMA(メチルメタクリレート)中に入れ、それを重合させてPMMAにすることによって、固形の記録媒体を得た。酸化チタン微粒子の濃度を変えることによって、光の散乱強度を制御し、光の平均自由行程を広い範囲で変え、波長分解能などの測定を行なった。その結果、実験を行なった範囲では、酸化チタン微粒子の濃度が高いほど波長分解能は高くなり、最高で0.11cm^<-1>に達した。これは、従来の材料で得られていた分解能約2cm^<-1>と比較すると、格段に高い。記録密度を最も高くする条件を見出すために、微粒子の濃度をより広い範囲で変えた記録媒体を作製し、測定を継続中である。
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