研究概要 |
1.単結晶アルミナの平滑試験片に4点曲げ荷重を負荷したときの,ラマン分光法におけるスペクトル645と418cm^<-1>のシフトは三方晶のc軸方向のひずみε_<33>に比例しており,この比例乗数つまりひずみ係数は645cm^<-1>よりも418cm^<-1>に対するものの方が大きい.つまり後者の方がひずみ感度が高い. 2.単結晶のアルミナでc軸方向を3方向に替えた3種類の鋭い切欠きを有する試験片に4点曲げ負荷を行った.このときの切欠き底近傍のラマンシフトの分布を,ラマン光のビーム寸法を2μmとして測定した.このラマンシフト量に,上記で決定したひずみ係数を乗ずることによってひずみ分布に変換した.c軸方向のひずみ分布が3種類の試験片の結果より3方向について決定することが出来た. 3.曲げ試験で用いた3種類の鋭い切欠き試験片対して,異方性弾性論に基づく3次元有限要素法解析を行った.この有限要素法によるによる計算結果とラマン法よるひずみの実測測定結果とはよく一致し,顕微ラマン法によりき裂先端近傍などの急激なひずみ勾配を的確に測定することに成功した. 4.多結晶セラミックスの応力測定法としてX線法があるが,この方法において負荷応力とX線ひずみとを関係付けるX線弾性定数の測定値をもとに,多結晶を構成する単結晶の弾性定数を決定する方法を提案した.この手法を窒化ケイ素に応用し単結晶の弾性定数を決定することに成功した.この値は,測定ひずみから応力を計算するときに有効に利用される. 5.セラミックスのミクロ応力とマクロ応力の関係を計算機シュミュレーションにより,多結晶モデルを作成し,弾性特性の単結晶から多結晶への遷移挙動を検討した.その結果,結晶の集合体が十分のマクロ特性をもつためには,一辺あたり約20個程度の結晶粒数を持つ体積が必要であることがわかった.
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