本研究では、微細加工によりシリコンの鋳型を作成し、ナノレベルの微細な構造の転写技術を開発している。本研究では二種類のモールド技術を開発した。第1の方法においては、反応性プラズマにより、深い構造をシリコンに形成し、ポリマーへの形状転写を試みた。応用として微小光部品の製作を目的とした。光学部品においては、表面の滑らかさが波長より十分小さい必要がある。反応性プラズマエッチングでは、表面粗さが十分でない。一方シリコンの結晶異方性エッチングを用いると結晶面が表れ、精度のより平坦面が得られるが、得られる平坦面は限られた結晶面となる。我々はプラズマエッチングにより、前加工を行いい、その後、結晶異方性エッチングにより平坦化する手法を提案した。これにより、結晶エッチングではエッチング率が最小でない面であっても、モールド面として形成できることを示した。製作したモールドの面粗さは10nm以下であり、高い精度のモールド面がえられた。この方法を利用して、ポリマー(PMMA)に色素を添加し、シリコンの鋳型形状を転写して微小共振器レーザを製作し、発振を確認した。 また第二の方法では、シリコン基板上に100nmオーダの微小周期の格子パターンを電子線により描画し、高速原子線によりパターンをシリコンに転写して、微細なシリコン鋳型を製作した。シリコン鋳型にポリマー材料(PMMA)を充填し、さらにその上に従来のリソグラフィ技術によりパターン転写を行った。その後、ポリマーを剥離した。アスペクト比がわずかに劣化したが、良い精度でシリコンの鋳型形状がポリマーに転写された。この方式により、光導波路と入出力のためのグレーティングカプラーを同時に製作できことを示した。
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