研究概要 |
現在,ガラスは光学部品に欠かすことのできない重要な材料である.とくにマイクロデバイスや光通信の分野では,ガラス部品の局部に精密微細加工を施す要求が出され,その要求も年々厳しいものになってきている.今後,この要求に答えるには成形後のガラスに対して,自由度の高い精密微細加工を実現することが不可欠である. 本研究ではガラス表面局部に超精密微細加工を施すため,膨張係数の温度依存性を利用した新しいレーザ精密微細加工法を提案している.本研究の主目的は,この新レーザ精密微細加工法の実現である.具体的には本膨張現象の基礎特性を理論的および実験的に十分把握した後,以下の4項目について実現を目指す. (1)μmサイズの球面形状凸部を高精度に形成し,ガラス基板上に多数のマイクロレンズを製造すること. (2)凸部を2次元に展開し線状の凸部マーキング,さらに凸部を多段に形成し3次元の構造物を構築する. (3)凸部はレーザ照射時に軟化しているため,刻印技術を複合して様々な形状の微細凸部形状を創成する. (4)非球面レンズやフレネルレンズなどをガラス基板上に高精度に創成する 今までにある条件でガラス基板上にYAGレーザを集光させると,基板がμmサイズから数mmサイズの範囲で凸に膨らむ現象を発見した.現象解明のための基礎実験を行った結果,局部表面温度がガラスの転移点に達したことで急激な膨張を引き起こし,凸部を形成したことが分かった.さらに,一端形成された球面状の凸部は,数ヶ月放置した後も大きさや形状が変化せず,クラックの発生も全く認められなかった. 以上より,レーザ照射によるガラスの本膨張現象を利用すれば,上述したようにガラス局部にマイクロレンズなどの微小光学部品やマイクロデバイスなどの3次元微小構造物,微細マーキングや機能を有する微細表面模様などが容易に創成できることが期待される.しかも,従来の成形加工のようにガラス全体を加熱する必要がなく,ガラス全体に歪みを残さず安定した自由度の高い超精密微細加工が実現できるものと期待される. 次年度は初年度の成果を受けて、(1)〜(4)の実現に向けて研究を遂行する予定である。
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