研究概要 |
本年度は,実験による検証として,炭化水素燃料火炎帯中のC2ラジカル強度比と熱力学的温度の相関を調べた.同時に,量子力学によるC2ラジカルの発光過程の理論解析を行い,C2ラジカル強度比とC2ラジカルの振動温度の関係を予測した.また火炎中に存在する化学種の発光や光吸収と局所的な熱力学的温度の関係を数値解析的に求める手法の確立を目的として,炭化水素燃料火炎中に存在するCOの吸収スペクトルを分子動力学法を用いて解析する手法を開発した.実験として,火炎中発光スペクトルのうち,C2スワンバンド中の473.7nm付近の発光強度と516.5nm付近の発光強度の比を得るために,予混合火炎の局所領域からの光を光ファイバーと分光器を用いて計測した.同時に,熱電対を用いて局所の熱力学的温度を測定した.C2ラジカル強度比と局所熱力学温度の関係のできるだけ多くのデータを得るために,バーナ管径,流速,供給酸素濃度,酸素温度,燃料(プロパン,メタン)を変化させた場合を調べた.層流火炎の場合には,量子力学理論解析で予測された温度と強度比の相関がみられた.しかし,熱電対で計測される熱力学的温度とC2ラジカル強度比から算出されるC2ラジカル振動温度は,火炎帯中でC2ラジカルが熱平衡状態にないために同等となることはないが,それらはほぼ等差的な関係にあることが分かった.乱流火炎の局所時系列測定の結果では,測定体積の前後光や測定装置に依存するノイズを除去する物理的な数値処理を行うことにより,乱流火炎中でも熱力学温度とC2ラジカル強度比の間に相関を見出すことができた.次に,火炎中の化学種発光スペクトル計算の前段階として,高温場におけるCOの赤外線吸収スペクトルを分子動力学法を用いて計算した.その結果,場の熱力学温度とCOの吸収スペクトル分布全体に関しては,実験値と定性的な一致がみられた.
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