人間同士の交流を考える際に、互いの心理的状態を把握することは円滑なコミュニケーションには不可欠である。これを実証するためには、心理学的アプローチの他に、工学分野からのアプローチが考えられられる。一方、頭部には入力として五感の全てが、そして出力として表情や首の運動が備わっている。したがって頭部を研究することは人間の高度情報処理機能、特に人間同士がおこなっている円滑なコミュニケーション機能を研究することにつながる。本研究は、人間と情緒面において動的に交流が可能な人間型頭部機能の開発および心理モデルの構築を目的とする。研究代表者らが開発した頭部機械は「喜び・怒り・驚き・悲しみ・恐れ・嫌悪」の6基本表情を表出可能であり、かつ皮膚センサを搭載したことにより人間との身体的コミュニケーションが可能となっている。この頭部機械を通して、人間と機械との情緒的交流に必要な感覚入力情報処理手法、表情表出機構の制御手法そして心理モデルの有効性を、実世界における実験により確認することを目的とする。 本研究課題により開発する機械が人間と情緒面において動的に交流するためには、人間型頭部機械の制御システムの開発とともに情緒交流に関する基礎方法論の確立および心理モデルの考案・構築が必要となる。その基礎部分として平成12年度を前後期に分け、前期では人間型頭部機械の眉・瞼・眼球・唇などの表情表出機構および頭部制御機構の設計および各自由度の制御アルゴリズムを検討した。この機構と制御アルゴリズムを、ヒトの心理遷移状態をもとにした情緒交流基礎論と融合させることにより、人間型頭部機械が完成した。後期では実機械を用いて、人間-機械間の実世界における物理的インタラクション実験をおこなうことにより、人間と情緒交流が可能な人間型頭部機械のメカニズムおよび制御アルゴリズムすなわち心理モデル、そして情緒交流基礎論を構築した。
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