今年度、高温超伝導マグネット冷却用に2種類の固体窒素作製・試験装置を検討した。その一つは、液体へリウムとの熱交換によって液体窒素を固化するための装置であり、設計・部品の製作が終わり、組み立ての段階にある。もう一種類は、ギフォード・マクマフォン(GM)冷凍機を用いた伝導冷却によるものであり、こちらは装置が完成し、窒素固化試験およびビスマス高温超伝導テーブを用いた安定性実験を行った。以下、この結果について報告する。 まず、試料室内部を窒素ガスで加圧状態にし、GM冷凍機にて室温から冷却していった。途中、温度が77K(窒素の1気圧における沸点)より少し下がったところで若干の液体窒素を注入した。そして、三重点(63.15K)近傍より温度が下がったところで完全に固化させることに成功した。内部の状態は試料窓から確認することができる。さらに、ビスマス高温超伝導テーブをこの固体窒素中に含浸し、熱的安定性の実験を行った。同試料に60A(臨界電流値以下)の電流を通電し、平衡温度に到達後(これを初期温度と呼ぶ)、ヒータにて熱擾乱を与えて電圧の時間変化を測定した。まず、固体状態と液体状態の違いを見るため、三重点(63.1K)近傍の温度領域(57.0K〜68K)において測定を行った。その結果、固体状態(63.1K以下の温度領域)では、液体状態に比較してテーブの安定性が悪くなることが分かった。これは、固体窒素と試料表面との熱接触不良が原因と考えられ、この熱接触を改善する必要がある。以上より、高温超伝導機器を過冷却窒素にて運動する場合、通常の冷却条件下では63.1K以下に温度を下げてしまうと熱的安定性が急激に悪くなり、事故の恐れがあることを示唆している。現在、20〜40Kの温度領域について詳細に測定を行うとともに、熱解析を行っている。今後国内学会、国際会議にて発表していく予定である。
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