研究概要 |
インターネットの普及やAV機器のデジタル化によりデジタルコンテンツの流通が急増している.一方,携帯端末の氾濫により,無線による音声,画像等の情報信号の送受信が日常茶飯事となっている.また,従来流通過程においてコンテンツを保護するために記憶媒体そのものを封印する方法やコンテンツを暗号化する方法では流通経路上での保全は可能であっても著作権保護策としては不十分である.本研究の主題は,情報の送受信時にスペクトラム拡散変調方式を利用した画像伝送時における電子透かしシステムを構築することである.本研究代表者は先に,流通経路上での機密保全と著作権保護との両方を保証するものとして,スペクトラム拡散(spread-spectrum)技術のセキュリティ機能に着目した電子透かしシステムを提案した.本年度の主要な研究成果は次の2点である。 1.従来SSシステムでは互いに独立な拡散符号が多数必要であるので,旧来の有限体理論に基づくシフトレジシタ系列やi. i. d. (independent and identically distributed)2値カオス系列が良好であると考えられていたが,最近非同期状態ではマルコフ系列の拡散符号の方がビット誤り(BER)の点で優れていること,および同期を前提としたBERの陽な評価式も与えられている.マルコフ性を有する拡散符号系列の遅れ時間lの自己相関関数のヒストグラムが形成するガウス分布の期待値および分散を陽な形で明らかにした. 2.上記の期待値および分散を用いて,同期を前提としないBERの陽な評価式を与えることにより,従来準同期で設計したシステムを非同期システムに変更する方がBERの点で優れていることを指摘した.
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