本研究では、波長の長い可聴音波を、振動板を用いず光(レーザ)により直接検出する原理・方法を確立することを目的としている。ここでは、まず光による可聴音検出の基本特性(周波数特性、受信指向性など)を解明するための基礎実験と理論的考察を行った。光源には赤色半導体レーザを用い、プローブ光ビームは基本的な構成として1次元の直線状ビーム(直径3〜4mm)とした。音波は100Hz〜20kHzの周波数である。未だノイズ成分が大きいため、音圧は80〜100dBとした。音源は無響箱に閉じこめ、石英レンズ窓を通じてレーザ光を入射した。音場を通過した光ビームに含まれる音波情報は光検出器により検出される。得られた結果を要約すると次の通りとなる。 (1)光と音の相互作用の理論から導かれる周波数特性では、長波長(低周波数)になるにつれ信号強度が低下する。基礎実験では、20kHzから500Hzの範囲では理論的予測と一致する結果が得られた。それ以下の周波数帯では逆に微増する特性が得られているが、これについては今後の検討が必要である。 (2)上記の周波数特性は、光検出回路を改善することにより平坦化が可能である。 (3)光検出器からの出力電圧は、プリアンプによる20倍増幅の後でおよそ100mV程度(1kHz、90dB、音幅約0.1m)である。ただし、ノイズが10mV程度と大きく、今後、検討と改善が必要である。 (4)光学的な音信号増倍の基礎実験を行ったが、この結果によれば、現状で15倍程度の増倍に成功している。これにより同時にSN比も改善される。これらの光学系の最適化は今後の課題である。
|