本研究では、正確な構造物剛性の評価を可能とする新しい構造物モニタリングシステムの実現可能性について実証的データを得ることを目的としている。すなわち、あるモデル構造物に対してここで提案する新しい構造物モニタリングシステムのプロトタイプを適用して、実際に理論どおり構造物の剛性が把握できることを実証する。その概略の方法は以下のとおりである。まず常時微動を計測することによりその共振振動数を把握し、さらに質量の正確に把握されている付加質量体を付加した上で再度共振振動数を求め、両者の共振振動数の変化から真の剛性を評価する。本研究では、手法の実現可能性を検討する上で最も重要な、どの程度の量の付加質量を用いれば精度よく観測される変化となって現われるかを明らかにする。本年度はその準備として高精度の計測システムを整備しそれを用いて実構造物の共振振動数がどれくらいの精度で観測できるかを調査した。その結果、1回15分間、インターバルをはさんで計23回、全10時間の計測において1次振動数の23区間の平均値は0.995Hz、各区間の平均値は0.984Hz〜1.011Hzに分布すること、その標準偏差は平均で0.00892、各区間では0.00461〜0.02457に分布することがわかった。変動係数で見ても平均0.00896で1%以下の精度で同定できることがわかった。また一次振動数と二次振動数の間にはよい相関があり、その変動は第一義的にはランダムなものではなく物理的な原因によるものであると推察されること、しかしピーク振幅レベルと振動数の間には相関がないことから非線形性の表出とは考えられないことがわかった。今年度の予備的検討ではRD法を用いておらず、単純なFFT法を用いたが、この結果から微動でもかなり高精度に共振振動数が同定できる見通しが得られた。
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