未確定性を前提とした生産システムモデルの創造

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12875108
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 野城 智也 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (30239743)
• キーワード: 未確定性 / 暗黙知 / 技術融合 / 生産モデル

研究概要

本研究は、建設プロジェクトの生産プロセスが内包する、「作りながら技術的詳細を決めていく」ことを可能ならしめる柔軟な統御・調整機構を明らかにし、これをもとに、従来の事前確定性を前提とした生産システムモデルとは異なった「事前未確定性を前提とした生産システムモデル」を提示することである。この、生産システムモデルは、第一には、時間軸上でのプロセスのモデルとして記述される。第二には、生産プロセスに関与する組織・主体相互の関係をあらわしたモデルとして記述される。第三には、柔軟な統御・調整機構を機能させている明示的及び暗黙的な知識の体系としてあらわされる。本年度は、研究担当者が関与している新技術を適用する建設プロジェクトを含め、実プロジェクトを対象にケーススタディを行なった。関係者への聞き取り調査をもとに、上記の第一、第二のファセットであるプロセス及び組織にかかわる事実関係を整理するとともに、第三のファセットである統御・調整機構と知識の関連性について特に詳細な分析を加えた。その結果、第一に、ケーススタディ対象のプロジェクトでは解決すべきどのような技術的な課題があるのかプロジェクト着手前にその全てを予見できないこと、第二に予見せざる技術課題がプロジェクト中途で発生した場合、それを誰がどのように解決するのか、関与組織・主体間では事前の取り決めがないことが確認された。しかしこのような事前確定性下での意志決定は、英語圏の既往研究で示されているchampion modelは説明モデルとしては有効ではないことも明らかになった。むしろ、関与組織・主体間の保有知識・技術の融合に着目した方が、説明モデルとしては有効であることがわかった。こうした結果を踏まえ、来年度は知識・技術融合に着目しモデルを作成する予定である。そのプレスタディとして、建築技術に係わる暗黙知識について既往研究のレビュー等を行った。

研究成果

• [文献書誌] Tomonari Yashiro: "A Japanese perspective on the decline of robust technologies and changing technological paradigms in housing construction : issues for construction management research"Construction Management & Economics, Taylor & Francis Ltd, London,. vol.19. (2001)
• [文献書誌] Tomonari Yashiro et.al: "Trial of 'skeleton rent system' in private sector using Nikkenkei open housing system"Proceedings of the conference of CIB W104 open building implementation 'continuous customization in housing',OBT organizing committee (CIB publication no.254). 71-78 (2000)
• [文献書誌] 野城智也: "ものづくりの暗黙知.技術の背後にある「いわずもがなのルール・知識」"すまいろん 住宅総合研究財団 2001.1. vol.57. 4-5 (2001)
• [文献書誌] 難波和彦,門内輝行,野城智也: "ものづくりの暗黙知-多種多様な技術があふれる時代に必要なことは?(シンポジウム記録)"すまいろん 住宅総合研究財団 2001.1. vol.57. 6-27 (2001)
• [文献書誌] スティーブン・グロアク 野城智也(抄訳・構成): "建築における技術移転と知識"すまいろん 住宅総合研究財団 2001.1. vol.57. 28-32 (2001)
• [文献書誌] 野城智也(一部分担・編集委員長): "みんなの声でつくる公共建築成功させる公共プロジェクトVMS"(社)公共建築協会. 88 (2000)