本研究は、建設プロジェクトの生産プロセスが内包する、「作りながら技術的詳細を決めていく」ことを可能ならしめる柔軟な統御・調整機構を明らかにし、これをもとに、従来の事前確定性を前提とした生産システムモデルとは異なった「事前未確定性を前提とした生産システムモデル」を提示することである。前年度の研究成果から、関与組織・主体間の保有知識・技術の融合に着目することの有効性が確認されたため、本年度は技術融合に焦点をあてた。技術融合は、異なる保有知識をもつ主体が何らかの形で連携することにより、価値の高い知識が創造されるプロセスをさす。不確定性をもった建設プロジェクトにおいて技術融合がおきていると考えられる事例をケーススタディし、技術融合がおきるための条件、メカニズムを分析した。その結果fusion makerと呼ばれる触媒的人格もしくはイベント(こと)が、技術融合の内容・成果に著しい影響があることがわかった。また、そこでおきる知識の融合は、従来の暗黙理論を超えた、「ストーリー知識」という観点で記述できることもわかった。以上の研究成果を踏まえ、同様の研究的関心をもったCIB TG47のグループとの国際ワークショップを開催し、fusion makerの概念の明確化をはかった。CIB TG47のメンバーである、英国・デンマークなどの研究者からも、fusion makerの概念設定について高い評価を受けることができた。Fusion makerの概念をベースに生産システムモデルを、組織構成モデル、プロセスモデルとして記述した。
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