研究概要 |
材料において諸々の物性や機能・現象が発現し観察されるスケールをミクロ、メソ、マクロと分類すると、離散格子モデルはミクロなレベルでの原子配列の詳細な知見を与え、連続体モデルはメソスケールでの組織を予測する。前者に属するものとしてクラスター変分法が、後者ではフェーズフィールド法が代表的な手法として知られている。内部組織の高分解能の計算を遂行するためには、両スケールの手法を融合し混成化することが必須であり、本申請では両者の融合に際しての理論的な問題を解決することを目的とした。主たる成果は次の通りである。 1.離散格子系に対する解析手法であるクラスター変分法(CVM)と連続体モデルのPhase Field法の混成計算を行い、L10相やB2相の規則化過程における組織形成と原子配列の時間変化の計算を遂行した。特に規則相の種々のバリアントを陽に計算に組み込み、逆異相境界の形成過程に関して大きな知見を得ることができた。 2.二次元正方唱を対象とし、連続変位クラスター変分法の定式化に取り組み、状態図の作成を行った後、散漫散乱強度の理論計算を行った。連続変位クラスター変分法の結果を従来の散漫散乱強度式に導入する方法と、新たに、連続変位クラスター変分法の範疇でself consistentに計算する方法を考案した。 3.離散格子を対象とした平衡状態図の第一原理計算を行った。特に着目したのは、Fe-Pd,Fe-Pt系のL10-disorder変態である。変態温度は実験状態図と極めて緊密な一致をみた。格子の熱振動の効果を取り入れたところさらに結果が改善された。
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