金属系電子配線のEM過程の基礎的理解を目指して

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12875115
• 研究種目: 萌芽的研究
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 水林 博 筑波大学, 物質工学系, 教授 (40114136)
• 研究分担者: 谷本 久典 筑波大学, 物質工学系, 講師 (70222122)
• キーワード: 電子材料 / 金属配線 / 薄膜 / EM効果 / 界面 / 粒界 / 結晶粒成長

研究概要

熱酸化により数nm厚程度のSiO_2膜を形成したシリコン振動リード基板上にスパッタ法により膜厚20〜60nmのアルミニューム合金(Al-Si(Cu))薄膜回路を成膜した。膜面に垂直方向の平均結晶粒径は〜20nmであり、X線回折ではAl<111>反射のみが観測される。得られる薄膜試料の比抵抗はバルクAlの比抵抗の3〜10倍で、粒界散乱および界面散乱を仮定すると説明できる。この試料に室温で電流密度10^9A/m^2の通電を行い、電気抵抗、内部摩擦、弾性率の経時変化を調べた。時間経過と共に電気抵抗は減少、内部摩擦は増大、弾性率は上昇する。電気抵抗の経時変化には、電流の向きに依存する可逆的変化成分も重畳して観測される。また、通電前後で、X線回折Al<111>反射ピークの半値幅は減少し、反射角は低角側からバルクAlの値に近づく。電気抵抗の経時減少の温度依存性から評価した活性化エネルギーは〜0.4eVであり、これは原子空孔の移動の活性化エネルギーである0.62eVと比べてもかなり低い。電気抵抗の減少およびAl<111>反射ピークの半値幅の減少は、通電による結晶粒径の増大を示唆している。前記の〜0.4eVは、結晶粒界層、基板側SiO_2との界面層、表面の自然酸化膜との界面層のいずれかでの原子の移動の活性化エネルギーであると推定される。また、ナノメートル級薄膜では200K以上で内部摩擦が急に大きくなり粒界緩和に起因すると推測されている。本試料では通電により結晶成長が起きることが示唆され、粒界緩和は減少することが予期されたが、実際には内部摩擦は大きくなった。すなわち、ナノメートル級配線の初期EM過程ではこれまでの知見では説明できない未知の過程が進行している可能性が高く、今後の研究課題である。

研究成果

• [文献書誌] H.Tanimoto,L.Pasqunrni,R.Prummer,H.Kromuller,and H.-E.Schaefer: "Diffusion of Explosive Compacted n-Fe"Scripta Materialia. 42. 961-966 (2000)
• [文献書誌] H.-E.Schaefer,K.Reimann,W.Straub,F.Phillipp,H.Tanimoto,R.Brossmann and R.Wurschum: "Interface Structure Studies by Atomic Resolution Electron Microscopy, Order-Disorder Phenomena and Atomic Diffusion in Gas-Phase Synthesized Nanocrystalline Solids"Materials Science and Engineering. A286. 24-33 (2000)
• [文献書誌] H.Mizubayashi,G.Nishikori and H.Tanimoto,: "High-Cycle Fatigue Properties of 316 SS under Thermal-Pulses"Materials Transaction. 42. 151-156 (2001)
• [文献書誌] H.Mizubayashi,S.Murayama and H.Tanimoto: "Feasibility of High-Strength and High-Damping Materials by means of Hydrogen Internal Friction in Amorphous Alloys"J.Alloys and Compounds. (in press). (2001)
• [文献書誌] H.Tanimoto,Y.Koda,S.Sakai,H.Mizubayashi and E.Kita: "Nanostructure and Thermal Stability of Au Film Prepared by Spattering Technique"Scripta Materiaria. (in press). (2001)
• [文献書誌] H.Tanimoto,S.Sakai,K.Otsuka,E.Kita and H.Mizubayashi: "Grain Boundary State and Elastic Property of High-Density Nanocrystalline Gold Prepared by Gas-Deposition Method"Physical Review B. (in press). (2001)