物質を構成する原子、分子の様子を視覚化する手段として、透過電子顕微鏡法は、最も発達しかつ普及した手段である。高真空に保たれた透過電子顕微鏡中で、液体や気体を安定に保持するためにのような雰囲気試料室といわれる一連の実験装置が開発されてきたが構造が複雑で制御が難しいので、化学の研究分野への透過電子顕微鏡の寄与は限られたものであった。 最近、高温安定性、加工性、密封性、電子線透過性に優れたプラズマコーティング膜が開発された。 本研究では日本において最も高度に発達した半導体集積回路微細加工技術を用いて加工することにより、透過電子顕微鏡内に図3のようなナノサイズの微細雰囲気試料室を複合的に作成し微細化学反応機構を持った化学反応器 (ナノセル・ケミカルラボラトリ)を作ることを試み。 本研究においては、ナノセルの構成材料である、プラズマコーティング膜の性能が最もキーポイントである。プラズマコーティング膜はエチレンやメタンを高周波プラズマ中へ導入する事により形成される炭化水素系アモルファス膜をである。 平成12年度は水溶液系のプラズマコーティング膜中への閉じこめの実験を行い、その成果をふまえて、どのような条件で作られたプラズマコーティング膜が、どのような材料を閉じこめるのに最適であるかを調べた。 まず、冷却凝固メタノールや水、加熱分解すると炭酸ガスや水素を発生する炭酸カルシウムや水素吸蔵合金を、プラズマコーティング膜二重層中に埋め込み加熱し、発生ガスがどの程度保持できるか調べ、より保持力が強くかつ、透過電子顕微鏡観察の容易な膜作成条件を探った。
|