SiC系繊維を用いて、新しい広帯域型電磁波吸収材料を実現する方法を検討した。カーボン導電層の厚さの異なる3種のSiTiCO系短繊維を混合条件を変えて複合化し、エポキシ樹脂マトリックス複合材料を製造した。繊維体積率は0.05、0.075および0.1である。1.0MHz〜1.0GHzの周波数範囲で複合材料の誘電特性と導電率を測定した。 短繊維とエポキシ樹脂を混合する時間を変えることにより、複合材料中の繊維の分布状態が変化した。研磨面の組織を観察することにより、混合時間とともに短繊維の平均長さが短くなるとともに分散が均一になった。短繊維の分散が均一になるとパーコレーション効果が減少することにより電気抵抗率が増加した。誘電特性の結果から、用いた繊維の導電率と複合化組織が複合材料の誘電特性に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。周波数によらず導電層の厚さが厚い材料ほど、複合材料中に入射した電磁波エネルギーが-20dB以下まで減衰する電磁波侵入深さが小さくなった。実験から求めた誘電特性を用いて求めた複合材料の電磁波透過特性、反射特性から、導電層の厚さが大きいほど電磁波の損失は大きくなり、厚さが小さいほど電磁波の表面反射特性は小さくなることが明らかになった。したがって、導電層の厚さの異なる繊維強化複合材料を組み合わせることにより、広帯域の電磁波吸収特性を実現することが可能になると考えられた。
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