アルミナおよびジルコニア微粉末を緻密薄膜カプセル内に微量のガスと伴に閉じこめ、ガス雰囲気下における材料の微細構造変化を評価観察する手法の開発に成功した。この際最も重要な技術はカプセル化であるが、試行錯誤の結果、以下の手順で最適な条件であることが判明した。1)補強リングに固定された薄片試料ないしはマイクログリッド上に微細分散させた粉末試料を作製する。2)試料の片面に対して、アセチレンを原料ガスとして直流プラズマ成膜装置で20nm以下の炭化水素緻密膜をコーティングする。(成膜された炭化水素膜は、水分子を透過させない緻密膜であり、3)その後、試料の上下を反転させた後(成膜面を変えた後)、上記直流プラズマ装置内に雰囲気ガスを投入し試料表面に吸着させる。その際、試料を冷却し吸着量が多くなるように工夫する。4)次に、試料を冷却しながら雰囲気ガスを排気し、試料反対面に炭化水素膜を成膜する。この操作によって、試料は炭化水素膜を材料組成とするカプセルに覆われる。5)この試料を室温に戻すことによって、試料は雰囲気ガスの室温における吸着平衡状態に置かれことになる。 雰囲気ガスにArを選定し、TEM加熱ホルダーを用いて高温その場観察を行った。その結果、本開発マイクロカプセルにより700℃まで安定に高分解能観察できることが分かった。これより、焼結温度がこれより低い物質の雰囲気下高温その場観察が可能であることが実証された。セラミックスなどより高温で合成される物質の合成過程をその場評価するためには、より耐熱性の高いマイクロカプセルの開発が今後の課題である。
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