置換めっき現象を利用して、シリコンウェファー上の光照射部位のみに金属を析出しパターニングを行う可能性を検討した。 通常、シリコン上に置換めっきが起こらない溶液条件であるニッケル塩溶液を用い、溶液に浸した基板にアルゴンイオンレーザーを照射して金属析出の有無を調べた。なお、シリコン基板としてフッ酸水溶液中で陽極酸化処理して作成した多孔質シリコン表面を用いた。この結果、塩化ニッケル希薄溶液を用いたときにのみ、X線光電子分光によりニッケル種の存在が確認された。しかし、この種は金属ニッケルによるものではなく、二価ないしは三価のニッケルによるものであり、表面をアルゴンエッチングするとシグナルが消滅した。ただし、一度だけではあるが、同一条件により金属光沢表面が得られた。エッチングの進行に伴い、酸化状態のニッケルが消えて金属ニッケルによるシグナルが出現した。その後、この析出を再現することができていない。さらに電位をかけて実験を行い、再現性ある光アシスト条件を探る。 光アシスト置換めっきの実現には、金属析出の相手反応となる酸化反応の把握とシリコン上での金属析出反応の把握が必須である。水分含有量の少ない非水系溶媒を用いて、相手反応の把握を試みた。通常条件で置換めっきが進行する銅塩溶液を用いた。この結果、置換めっきに伴う相手反応はシリコンの水による酸化反応であることが明らかとなった。この反応が相手反応である場合、熱力学的には卑金属であるニッケルでは光アシストなしでも置換めっきをおこすはずである。しかし、この現象は観察されない。また、銅置換めっきにおいて、平滑シリコンと多孔質シリコンの挙動が大きく異なることが判明した。後者において置換めっき反応が容易に進行する。この原因についてもさらに検討を行っている。
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