研究概要 |
ゼオライト構造を有したメソポーラス物質は,ゼオライトの強い酸性質と規則的なメソ孔をあわせもつことから,これまでにない新規触媒材料として期待されている.本研究では,ゼオライトのアルカリ溶解から生成したユニットを原料としたメソ多孔体の合成を,流通式反応器を用いて検討した。特に2段式の流通合成反応器を用い,高いpHでアルカリ溶解を行った後に,引き続き低いpHでメソ多孔体を連続的に合成することを試みた。ZSM-5ゼオライトを充填し80℃に保ったカラムに,NaOH水溶液を流通させて,ゼオライトのアルカリ溶解を行った。続いて,ゼオライトのアルカリ溶解液と界面活性剤が混合するように流路を設け,界面活性剤水溶液をテフロンチューブ内を室温で流通させながら,ゼオライトから溶解したアルミノシリケート種を凝集させた。流路の出口から得られた懸濁液に,塩酸を適宜加えてpH調整をした。得られた生成物は550℃で焼成後でも,壊れることなくメソ孔構造が残っており,この試料の窒素吸着等温線では,メソ孔構造の存在を示すと考えられる相対圧0.4付近で緩やかな立ち上がりを示した。またクメンのクラッキングを行ったところ,回分法で合成したM41Sよりもさらに高いクラッキング活性をもつことがわかった。このようにゼオライトのアルカリ溶解過程とメソ多孔体合成過程を分けることは,強い酸性質をもつメソ多孔体の合成に重要であることが示唆された。
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