平成12年度に引続きC言語を用いて、コンピュータ上に大腸菌の機能ルールを復元するシミュレーションプログラムの作成作業を行った。大腸菌の『意志決定』装置として、RNAポリメラーゼ、シグマ因子および転写因子からなるタスクセレクターを設定した。機能ルールはアルゴリズムの流れ図に変換後、ソフトウェアデーターベースに登録し、センサーからの入力情報に応じてタスクセレクターにより選択させるようにした。また、機能ルールの実行段階において、ハードウェアデーターベースから必要な遺伝子を読み出すようにプログラムした。これにより、大腸菌の挙動に関する定性的なシミュレーションを実行するための準備ができた。なお定量的なシミュレーションを行うための前提となる機能ルールの詳細化を図るために、大腸菌のリン酸飢餓応答のアルゴリズムに着目し、細胞内ポリリン酸蓄積過程を解析するための実験も行った。実験は、連続培養装置を用いて、培地中のリン酸濃度が異なる環境間の非定常遷移状態におけるデータを取得し、定量的なシミュレーションのためのパラメーターを取得した。これらの成果をもとに、大腸菌のリン酸代謝とリン酸レギュロンによる遺伝子発現調節機構の定量的シミュレーションを行った。さらに、大腸菌の走化性アルゴリズムを基礎として、移動ロボットの探索行動を制御するプログラムを開発した。研究の分担は、大竹が大腸菌の培養実験とポリリン酸蓄積機構の解析によるアルゴリズムの詳細化を担当し、滝口がバーチャル大腸菌の構築を行った。
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