研究概要 |
本課題では光熱変換を用いて分光学的に液液界面の局在分子の定性・定量分析を行うことを目的とした。我々はこれまで熱レンズ顕微鏡を開発し,μmレベルの空間分解能で10^<-21>molの検出下限を達成していろ。一方で,分子の吸光波長である励起光と熱発生によって生成した屈折率変化(熱レンズ)を検出するプローブ光が同軸上にあるため,光軸方向の分解能は数μm以上となる。その問題を解決するために全反射によるエバネッセント光による励起を利用した光熱変換液液界面測定を着想した。 高感度分析のためには,界面にしみだした百数十nmのエバネッセント光によって励起された分子によって発生した屈折率変化を測定するためのプローブ光の導入の最適化がポイントとなる。比較実験の結果,界面に対して垂直に入射するよりも,界面に対して平行に入射し,その偏向を測定する光熱偏向法が感度において2桁程度有利であることがわかった。一方で,プローブ光の位置による信号強度の依存性は非常に大きく,その中心がやや油相側にあるときが最大となることも示された。これは油相側において増感率が水よりも二桁以上大きいことによると考えられる。モル吸光係数22,400M^<-1>-cm^<-1>の鉄バソフェナントロリン錯体が水/ドデカン界面に局在する分子であることを利用して検出下限(S/N=3)を求めたところ,分子平均占有面積換算で22.2nm^2と見積もられた。この値は1/100単分子膜の検出に成功したことを意味している。 本研究結果は,光熱変換顕微鏡開発のための基礎的なデータを与え,本光学配置を顕微鏡下に組み込むことにより三次元的に空間分解能がμmレベルの分析手法開発につながることが期待される。
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