液面上や液面の近くで、個々の分子は液面内の運動や溶解・吸着を繰り返している。本研究は、「希薄な溶液の表面において高速で動き回る溶質分子の1つ1つを数える」というこれまでに成功例の報告が全くないアプローチにより界面にある分子の動的な挙動を観測することで、界面の関わる化学現象の理解を新規な観点から開拓する試みである。この目的で超高感度検出法を駆使して1μm^2あたりの分子が0個か1個かを問題とし安易な統計処理には頼らない。研究目的は、1)液面で高速に動き回る分子を一つずつ数える手法の確立、および、2)界面における少数分子系の化学の理解に向けた研究への着手である。 本年度は、現有の共焦点レーザー蛍光光子計数顕微鏡システムをベースに改良を加え、蛍光検出効率の向上をはかるとともに、並行して既存のシステムを用いて水面および油水界面にある超希薄色素分子の検出実験を行い以下の成果を得た。 (1)単一光子計数モジュール、必要な光学素子を導入して共焦点蛍光光子計数顕微鏡の性能向上を計った。設計値であり未検証ではあるが24倍の感度向上が期待できるまでに改良を加えた。 (2)10^<-12>〜10^<-10>mol/dm^3のローダミン水溶液の表面を観測して、水面にある分子由来の信号をバルク中にある分子からの信号と識別して観測する手段を検討した。表面選択性の基準を新規に導いて提案した。 (3)蛍光光子数の時間的変動(パルス的信号の頻度・高さ・幅、自己相関の幅)から表面にある色素分子の密度、会合数、面内移動速度を決定する手法を検討した。蛍光光子数の時間的変動データの自己相関解析を行い、超低濃度の溶液でも界面にある溶質分子同士は頻繁に相互作用して協調的挙動を取ることを実証するデータを得て報告した。 (4)イオン強度や酸度の異なる溶液を測定し表面特異的な分子挙動を見いだした。
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