酸化亜鉛は代表的な多機能性材料である。特殊な形態を有する酸化亜鉛結晶からは新規物性の発現が期待される。本研究では、酸化亜鉛セラミックスを通電加熱することにより、その表面に種々の形態の酸化亜鉛結晶が成長する現象に着目した。この通電加熱法における酸化亜鉛結晶の形態制御法の確立を目的として、以下の実験を行った。 線材状の酸化亜鉛セラミックスを作製し、空気中において、この線材を通電加熱した。電流密度を10〜90A/cm^2の範囲で変えた場合、試料温度は300〜1300℃に及んだ。電流密度の増加、つまり試料温度の上昇に伴って、結晶形態は六角柱状からホローへ変化した。本手法の結晶成長機構は、高温に加熱された試料から発生した酸化亜鉛または亜鉛蒸気からの気相成長であると考えられる。ホローへの形態変化は、温度上昇によって過飽和度が増加したことに起因すると考えられる。 雰囲気の酸素濃度を変えて通電加熱した結果、酸素を含むアルゴン雰囲気での結晶形態は六角柱状やホローとなった。アルゴンのみ、または水素を0.1%含むアルゴン雰囲気ではウイスカーとなった。この結晶形態の変化は、気相中の亜鉛濃度に起因すると考えられる。 得られた酸化亜鉛結晶のフォトルミネッセンス測定を行った結果、ホローや六角柱状結晶からは、緑色発光(ピーク波長520nm)が観測された。ウイスカーからは紫外-紫色発光(ピーク波長390nm)が観測された。このバンド端付近の発光は、ウイスカー内部の欠陥が他の結晶よりも少ないこと、また量子細線効果が発現するサイズに近づいたことに起因すると推察される。
|