酸化亜鉛は代表的な多機能性材料である。特殊な形態を有する酸化亜鉛結晶からは新規物性の発現が期待される。本研究では、酸化亜鉛セラミックスを通電加熱することにより、その表面に種々の形態の酸化亜鉛結晶が成長する現象に着目した。平成13年度は、通電加熱用のZnOセラミックス線材の相対密度が結晶成長に与える影響を検討した。また、得られたZnO結晶の発光特性について調査した。 相対密度が低い試料をアルゴン雰囲気中で通電加熱した場合、直径が数十nmにおよぶ微細なウイスカーが成長した。しかし、相対密度が高い試料では、同様の条件で通電加熱を行っても直径がミクロンオーダーのウイスカーしか成長しなかった。このことから、相対密度が低い試料ほど、微細なウイスカーが試料表面に生成することがわかった。 得られたウイスカーのフォトルミネッセンス測定を低温(15K)(8160)16室温の温度範囲で行った。低温においては、どのウイスカーからも明瞭なバンド端付近の励起子発光が観測された。室温において、相対密度が高い試料から得られたウイスカーからは、バンド端付近の紫外発光とともに、不純物や欠陥に起因すると考えられる緑色発光が観測された。これに対し、相対密度が低い試料から得られたウイスカーでは、紫外発光が支配的で緑色発光は極めて弱いことが分かった。 低密度試料から得られるウイスカーは、発光効率の高い紫外発光素子への応用が期待できる。また、光強励起実験を行った結果から、このウイスカーは、室温レザー発振の可能性を有することが示唆された。
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