研究概要 |
水溶液を磁気処理することにより出現する異常メモリー効果を、水銀電極を用いた電気毛管曲線の測定および電極界面の赤外反射分光法により研究し、以下の研究成果を得た。 (1)溶液中の微量な不純物や超微粒子が磁気処理効果に及ぼす影響を取り除くため、超純水製造装置を用いて調整したNaCl水溶液を用いて、磁気処理効果について研究した。電気毛管曲線の測定から、2mol/dm^3のNaCl溶液では、0.38Tでは磁場照射時間が20分以上で、磁気処理による界面張力の増加が現れ、その効果は放置後170時間にわたって一定の効果が持続し、界面張力が元の値に戻るには約10日間必要であることが判明した。この磁気処理効果は、溶液中に超微粒子を分散すると、非常に弱くなることも明らかにした。 (2)水銀電極の界面張力に及ぼす磁気処理の影響を、カチオンの特異吸着の観点から解析するため、(C_2H_5)_4N^+,(C_2H_5)_3NH^+,(C_2H_5)_2NH_2^+,C_2H_5NH_3^+,(CH_3)_3NH^+,(CH_3)_2NH_2^+,CH_3NH_3^+,NH_4^+のアルキルアンモニウムイオンについて研究した。磁気処理により界面張力が顕著に増加したイオンは(C_2H_5)_4N^+と(C_2H_5)_3NH^+であり、(CH_3)_3NH^+でも僅かな影響が観察された。これらの結果から、磁気処理による界面張力の増加は、イオン半径が大きく、特異吸着性の強いアルキルアンモニウムカチオンほど大きくなることが明らかなった。さらに、これらの溶液中では異常メモリー効果は約48時間持続することも明らかにした。 (3)磁場照射した(CH_2H_5)_4NCl溶液について、赤外反射分光法により水分子の構造への影響を研究した。磁気処理により、電極に吸着したポリマー状態の水分子が減少し、会合数の少ない水クラスターに変化することを見出した。
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