(1)電解質溶液中のアニオン種の違いによる磁気処理効果の影響について、KI、KSCN、KCl、LiCl、NaClの各溶液を磁気処理した場合の電気毛管曲線の変化を検討した。その結果、KIおよびKSCNでは磁気処理によって界面張力が増加するが、3種類の塩化物についてはこのような変化が見られなかった。このことから、すでに明らかとなっているカチオン種と磁気処理効果との関係と同様に、アニオン種についてもイオン半径が大きく特異吸着性の強いイオン種に対して磁気処理効果が現れるということを明らかにした。 (2)磁気処理が水およびイオンの水和状態に与える影響を調べるため、磁気処理の有無と水素結合との関係について低温セルを組み合わせたFTIRを用いて調べた。室温での測定ではアニオンに配位したOHと配位していないOHの各伸縮振動を分離することが困難であったが、-120℃に冷却した状態でこれらの振動に対する吸収が分離できることが判った。しかしながら、磁気処理水と未処理水での吸収の違いについては明確な差が見られなかった。 (3)本研究で行った磁気処理溶液における異常メモリー効果について総括すると、電解質溶液におけるカチオンまたはアニオンの種類に応じて磁気処理効果の有無に違いが生じ、イオン半径が大きく特異吸着性の強いイオンが含まれる場合に磁気処理効果が生じることが系統的に明らかになった。また、その効果は特定のイオン種においては1週間以上持続されることも判った。磁気処理効果のメカニズムについては、イオン半径が大きく元々水和する水分子との結合が弱いイオンにおいて、磁気処理によってこの結合が促進され、水和イオンが構造化することによって、電気化学界面における二重層容量や界面張力に変化を与えているとのモデルを示した。
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