研究概要 |
本研究課題で今年度得られた成果を以下に示す。 (1)11族金属が触媒として作用する新反応を見つけだし、有機合成的に実用的な反応を目指し,11族金属が関与する反応の反応機構を実験的かつ理論的に明確にし、さらなる新反応開発のための知見を得た。 (2)銅(I)塩錯体と13,14族化合物などとの組み合わせによる新規反応の開発した。 極く最近、銅(I)塩錯体と有機ケイ素化合物が極性溶媒中でスムーズにメタセシス反応が進行することを見つけ、本反応の一般性を確立し、さらに、有機ケイ素と同じ14族元素であるスズ、ゲルマニウムなどの他の有機金属化合物との反応性を調べ、新しい合成反応を見つけ、速報としてその一部を速報として報告した。その際、新規銅(I)塩錯体を合成、検討することで各反応に対して最適な触媒の開発を行った。また同様に有機スズ化合物、有機ホウ素化合物などの13,15族元素を含む化合物についても研究を行った。 (3)銅触媒を用いる金属-金属結合間のメタセシス反応および金(I)錯体と13族及び14族化合物との反応探索と金(I)塩錯体を触媒とする新規有機合成反応の開発した。 銅(I)塩を触媒とした金属-金属結合の生成反応を開発する。銅(I)触媒の特異な反応性を利用して、ケイ素-水素結合間の組み替え、ケイ素-スズ結合間の組み替えなど、合成法として有用と思われる新規触媒反応の発見を目指した。さらにメタセシス反応を利用したケイ素、スズなどを含む有機金属ポリマーの新規合成法を見つける。さらに、金(I)錯体は銅(I)錯体と同様に一価と三価のredoxサイクルを有しているので、金(I)錯体においても13,14族有機金属化合物との反応を調べ、新しい合成反応を見つけた。 (4)非局在電子系を有する有機分子の新規合成法の開発した。 新たに見つけたケイ素-銅交換反応によるカップリング反応と、従来のPd触媒を用いるStilleカップリング等との基質選択性の違いを組み合わせて利用することで、非局在電子系を有する有機分子の「オルソゴナル合成法」を確立し、おもに非局在電子系をもつ芳香環やヘテロ環からなる有機分子の簡便かつ効率の良い合成手法を見つけた。
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