研究概要 |
gem-二亜鉛種は,同一炭素上に二つの炭素-金属結合を持つため,特異的な分子変換反応が可能となる。同一炭素上で二回の炭素アニオンとしての反応が進行するので,二度の連続した求核付加・置換反応,もしくは,求核付加反応に続く脱離反応の組み合わせが考えられる。実際,検討を重ねた結果この研究期間内に,bis(iodozincio)methaneに関してFig1のような分子変換をみいだしている。前者に対応する反応として,遷移金属触媒共存下における有機ハロゲン化物との段階的カプリング反応,カルボン酸クロリドとの反応による1,3-ジケトン合成,α,β-不飽和ケトンとの1,4-付加反応が挙げられる。また,付加-脱離反応としては,カルボニル基のメチレン化を挙げることができる。これらの合成反応としての意味合いは,決して低くないと思われるが,bis(iodozincio)methanの代りにbis(iodozincio)ethaneを用いた場合,これらの反応,特に連続した求核付加・置換反応の意味合いは全く変ってくる。合成化学的な意味は単に炭素が一つ増えたというだけではない。一つ増えたために反応においてstereogenic centerが生じ,そのエナンチオ・ジアステレオ選択性が問題となるからである。これらの選択性制御も行うことができた。
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