研究概要 |
ビニルエーテルを重合して得られるポリ(ビニルエーテル)は、高分子反応によって工業的に重要なポリ(ビニルアルコール)へ誘導することができる。従って、ポリ(ビニルエーテル)の一次構造、とりわけ立体規則性を制御することができれば、ポリ(ビニルアルコール)の立体規則性のみならず、その特性を制御することが可能である。そこで本年度は、まず各種遷移金属触媒を用いてビニルアルコールを重合し、その立体規則性制御の可能性を模索した。 Ti、ZrおよびVを中心金属とする各種メタロセン触媒によるイソブチルビニルエテールの重合を検討した結果、ポリマーが生成することが分かった。MAOを共触媒として用いると、ポリマーの収率および分子量が向上することが分かった。また、溶媒としてはヘキサンが最も良好な結果を与えることを見出した。一方、Ti、ZrおよびHfを中心金属とする各種ポストメタロセン触媒を用いた重合では、MAOの存在下、ポリマーを与えることが分かった。特に中心金属がTiの時に収率が増大することが分かった。また、配位子の置換基がかさ高いほど収率が向上することを明らかにした。ポリマーの立体構造をNMRによって見積もった結果、rr含率が10%程度と低く、mmおよびmr含率が40%程度と高くなっており、メソ含有率がラセモ含有率よりも高いという結果が得られた。しかしながら、立体規則性制御は完全ではなく、触媒系のより精密な設計が必要であることがわかった。これは、本重合がカチオン重合機構で進行している可能性があることも理由の一つであると考えられる。 別の重合系として、ネオジウムアルコキシドとMAOからなる触媒を用いてイソプレンの重合を検討した結果、高シス1,4-含量(>90%)および最確分子量分布を有するポリマーが得られることが明らかになった。さらに第三成分としてt-ブチルクロリドなどの塩素化合物を添加すると重合活性およびシス含量が向上することを見出した。
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