研究概要 |
(1)種々組成の荷電を有するブロック共重合体及び単独重合体の合成:片末端に1級アミノ基を有するポリエチレングリコール(PEG)を開始剤として用い、β-ベンジル-L-アスパルテートN-カルボン酸無水物(BLA-NCA)あるいはε-ベンジルオキシカルボニル-L-リシンN-カルボン酸無水物(Lys(Z)-NCA)を開環重合させた後、側鎖の保護基を除去することによってPEGとポリアスパラギン酸(P(Asp))あるいはポリ-L-リシン(P(Lys))のブロック共重合体(PEG-P(Asp),PEG-P(Lys))を得た。また、n-ブチルアミンを開始剤として用いることによってP(Lys)も得た。これらの重合及び構造の確認はGPC測定及び^1H-NMR測定により行い、P(Asp)重合度が18,37,78のPEG-P(Asp)、P(Lys)重合度が18,35,78のPEG-P(Lys)、重合度20,45,82のP(Lys)が合成されたことを確認した。 (2)ポリイオンコンプレックス(PIC)ミセルの特性解析:上記のようにして得られたPEG-P(Asp)とPEG-P(Lys)あるいはP(Lys)を水溶液中で電荷を中和することによってPICミセルが調製された。得られたミセルについて25℃において動的及び静的光散乱測定により、流体力学半径(R_h)や見かけの重量平均分子量(M_<w,app>)が決定された。P(Lys)/PEG-P(Asp)では、M_<w,app>は異なるもののR_hはすべての組み合わせについてほぼ一定の値(25nm)であったが、PEG-P(Lys)/PEG-P(ASp)では、R_hが荷電連鎖の重合度の増加に伴い、30nmから40nmまで変化した。M_<w,app>からコア半径及びPEG連鎖の会合数を決定し、これらの値からコアとシェルの界面におけるPEG連鎖の密度を算出した結果、PICミセル形成では、コアとシェルの界面におけるPEG密度が重要な因子であり、この値がブロック共重合体の荷電連鎖の重合度によって依存していることが確認された。この界面におけるPEG密度の違いが、外殻層の厚さ等の違いを導き、R_hの違いを導いていることが示唆された。
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