研究概要 |
高分子2次非線形光学材料は,潜在的性能は期待されていながら,カットオフ波長の長波長シフトによる発生光強度の低下,分子鎖の配向,ならびに配向緩和に基づく性能の経時的低下などの問題をかかえている。本研究では,重合結晶化法を用いて芳香族縮合系高分子材料を調製し,分子鎖の化学構造,配向,結晶構造,ならびに形態とSHG活性との関係を明らかにする。平成12年度の成果を以下に要約する。 1.新規ポリマー単結晶の作製 SHG活性を持つと期待できるポリアゾメチン(PAz),ならびにポリ(アゾメチン-エステル)(PAzEs)単結晶の調製を試みた。PAzに関しては,自己縮合型である4-アミノベンゾニトリルを用い,流動パラフィン中180℃で重合結晶化することにより,長さ数μのウィスカーを得ることに成功した。PAzEsでは,アゾメチン結合を内包したアセトキシカルボン酸をモノマーとし,ジベンジルトルエン中320℃で重合結晶化を行いことにより,針状結晶が得られることが分かった。内包しているアゾメチン結合の方向性により,結晶形態に違いが現れることも見いだしている。但し,結晶形態の均質性に劣るため,更なる条件検討が必要である。 2.共重合ウィスカーにおける共重合連鎖配列制御技術の開発 ポリ(p-オキベンゾイル-co-p-メルカプトベンゾイル)について,ランダム,交互,並びに周期的連鎖配列が結晶形態と分子鎖配向に及ぼす効果について調べた。その結果,4-アセトキシ安息香酸と4-アセチル-S-メルカプト安息香酸とのランダム共重合では,針状結晶は生成しにくいことが分かった。これは,析出結晶化に預かるオリゴマーの結晶性が低下すること,ならびにオリゴマーの凝固曲線が低温へシフトするために相分離様式が結晶化から液-液相分離に変化する傾向にあることに起因している。そこで,4-(4-アセトキシベンゾイル)-S-メルカプト安息香酸や4-(4-アセチル-S-メルカプトベンゾイル)オキシ安息香酸などの規則的連鎖構造を持つモノマー群を合成し,流動パラフィン中で重合することにより,共重合体でもウィスカーが得られることを見いだした。分子鎖はウィスカーの長軸方向に配向していることが分かり,SHG活性を持つ構造と期待できる。
|