我々の提唱している方法は、レーザーパルスを透明媒体中を伝播させその端面に蒸着させた金属で吸収させて、超高温度の金属プラズマを発生させ、それによって接している爆薬を起爆させようというものである。特に端面を粗面化する処理によりレーザーエネルギーの吸収を効率良く行わせることも重要な提案のひとつである。 この方法は、いくつかの過程に分類できるので、まず本年度は主として透明媒体端面での光吸収過程について系統的に調べた。特に、粗面化することの有効性、および金属蒸着膜の厚み、レーザーエネルギー依存性などを研究した。得られた結論は以下の通りである。 1.レーザーアブレーションの実験を系統的に行い、アクリル試料およびそれに蒸着したアルミ薄膜のアブレーション閾値をしらべ、その大きさに約10倍程度の差を確認した。 2.次に、アクリル試料に粗面化のみを施した場合と、鏡面の場合とを比較し、大気中でアブレーションを行うと、生じる空中衝撃波面の強さに大きな差が生じることを確認した。すなわち、明らかに粗面化すると、アブレーション閾値が劇的に減少している。 3.次に、粗面化の程度を数種類変えて実験を行い、粗面化の程度による発生衝撃波の強さの依存性を調べた。その結果、適切な粗面度において最も強い衝撃波が発生するらしいことがわかったが、その差はあまり大きくない。すなわち、少なくとも実験条件の範囲では、粗面であれば同程度の衝撃波が生じている。 4.アルミ蒸着の厚みを変えた一連の実験をおこない、厚み依存性について調べた。使用しているレーザー、1パルス200ミリジュール、4ナノ秒、を直径1ミリ程度に集光する条件では、300ナノメートル程度まではほぼ完全にアブレートされているが、400ナノメートルではやや不完全になることがわかった。
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