研究概要 |
原油井戸に生息する油水分離槽の水相から採取したバクテリアのコロニー観察より、グラム陰性菌Pheudomonas主体の細菌類が生息していた。このバクテリアは、水中に有機物と共に浮遊しているダイオキシン類を24時間という極めて短時間でほぼ分解できることを明らかとした。近年、焼却灰にダイオキシンを含む混合土壌中のダイオキシンの除去が緊急の課題とされている。本研究では、人工のダイオキシンを含む土壌を作成し、これに培養したバクテリア、あるいはバクテリアが生息している油水分離槽の水を直接添加して土壌中のダイオキシンの分解を試みた。土壌としては粘土質も含む鹿沼土を用い、土はまず、250℃で焼き、ベンゼンさらに水で洗浄後、乾燥させたものを用いた。ついで、合成ダイオキシンを10ppmとなるように土に添加混合した。このダイオキシンを含む土10gにバクテリアの入った水溶液30mg添加し、混合後、静置し、12,24,48時間ごとに土をサンプリングし、総ダイオキシン類の濃度を測定した。バクテリアは0.4x10^6個/mlの初期濃度であり48時間後にO.7x10^6個/mlとわずかに増加した。寒天で培養したバクテリアを用いた場合、初期濃度10ppmのダイオキシン類が48時間後7ppmと低下して約3ppmの濃度減少を生じ、また、直接、油水分離槽の水を添加した場合は、48時間で約2ppmのダイオキシン濃度減少が観察された。水中のように短時間ではないが、Pheudomonas主体の細菌類により土壌中のダイオキシンが分解されることが明らかとなった。水中と比べて、土壌中のダイオキシンの分解速度が低下した理由は、ダイオキシンが土壌に吸着し、また、粘土鉱物の層間にも入ったためにバクテリアとの接触確率が低下したからと推定される。
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