(1)シクロヘキシミド処理によるアポトーシスの抑制 タバコ属種間雑種(Nicotiana suaveolens x N.tabacum)の実生由来の培養細胞を36℃条件に維持すると正常に増殖するが、これを28℃条件へ移すとアポトーシスを起こして細胞が死滅する。細胞を薄い層にして静置する薄層培養に対して、シクロヘキシミド(翻訳阻害剤)を100μg/mlの濃度で添加して培養した。種々の検査法でアポトーシスの進行状況を調査したところ、アポトーシスが高い程度で抑制されたことを確認した。この雑種細胞におこるアポトーシスにはタンパク質の合成が必要であることが判明した。また、アポトーシス誘導後、一定時間経過してからシクロヘキシミドを処理した。誘導開始2時間目以前に処理すると細胞死が抑制されるが、誘導開始4時間目以降に処理すると抑制されなかったことからこの反応が不可逆になるポイントがアポトーシス誘導後約3時間目に存在していることが明らかになった。 (2)Nicotiana debneyi x N.tabacumに見い出された雑種致死現象をアポトーシス タバコ属種間交雑(Nicotiana debneyi x N.tabacum)で得られる雑種実生は致死性を示すことが知られていた。この致死性は高温(34℃)条件では、発現せず、致死性を回避できることがわかった。また、28℃へ移すと致死するが、この際、アポトーシスの種々の特徴を示すことがわかった。また、複二倍体であるN.tabacumの祖先種の1つN.sylvestrisとの交雑を実施したところ、N.debneyi x N.sylvestrisとの交雑により得られた雑種実生は致死し、その細胞死の過程はアポトーシスであることが判明した。
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