平成12年度は主として、小中学校における農・園芸活動の実態をアンケート調査によって探った。今年度はまず、園芸活動を取り入れた小中学校を訪ねてその実情を視察するとともに、指導者の体験談を聞いた。その概要をまとめるとほぼ次のとおりである。学校の美化につながる花の栽培に対しては児童・生徒は深い関心をもっていて、熱心な先生がいると徐々に参画するようになる。この共同体験とその産物である花と景観を通して児童生徒と教師との意志疎通が円滑になる。きれいに花の咲いた校庭は彼らに誇りと自信を与え、コンクール等に入賞するとより一層熱意が高まる。問題はこの活動が継続できるかどうかである。実際、花づくりに熱心な教師が転勤したあとには荒れた花壇が残っているだけという例もあれば、教師は替わっても毎年コンクールに入賞するという学校もある。その違いは、地域の協力があるかいなかによる例が多いようである。次に、農耕を学び、家族や市民の交流の場としての試みが拡大しつつある、いわゆる農業小学校の実態を探った。大きく二つのタイプがあり、一つは児童生徒に対する体験学習ならびに交流の場とするもの、いま一つは、農耕活動そのものとその環境がもつ心身の癒しや人間的成長の効用を活かして、おとなを含めた人間の心身の健康を回復し、健全な成長を図ろうとするものである。いずれかといえば、表立った物には前者が多い。さらに、市民農園の実態を調べ、児童生徒の教育の場としての活用の可能性を探った。市民農園には食べ物として利用する作物の大部分が栽培されていて、それらがどのように生育しているか、どの部分が食べ物として販売されているかなど、を学ぶうえで重要な役割を、市民農園は果たしうることが明らかになった。
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