研究概要 |
アナゴガレクチン(Congerin I)の立体構造を基に糖鎖結合部位に存在するアミノ酸を置換して触媒基(カルボキシル基)を導入した。具体的には、Congerin IのArg48をAspあるいはGlu,Tyr51をAspあるいはGlu,さらにArg48とTyr51をそれぞれAspあるいはGluに置換した変異体(4種)、また、Asp66をGluへ置換した変異体とAsp66をGluへ置換しTyr51をAspまたはGluへ置換したもの合計11種類の変異体を調製した。いずれも大腸菌にて可溶性画分として発現した。これらの内Arg48をAspあるいはGluに置換した変異体では赤血球凝集能はなく、またアフィニティクロマトグラフィーにおいても糖鎖との相互作用は見られず、糖鎖結合能が失われていた。次に糖鎖結合能を有する5種とcongerin IについてpNPβGal,pNPαGal,pNPβGlc,pNPαGlu,pNPβGlcNAcの5種の基質を用いたassay系で加水分解能の有無を調べた。いずれも殆ど加水分解活性が見られなかったものの、Tyr51->Asp変異体ではpNPαGal、Tyr51->Asp/Asp66->Gluの変異体ではpNPαGluに対する加水分解能が他に比べ高い傾向を示した。これら変異体は、進化工学的手法での活性変異体作出でのテンプレートに有用であることを示した。 進化工学的手法を確立するためにerror-pron PCR法およびcongerin Iとcongerin IIの間でのDNAシャフリングにより変異を導入する実験系の検討を行った。SSCP法により変異導入の効率を評価した。 さらにcongerin IIのX線構造解析をすすめ、congerin IIにはlactoseなど2糖が結合できる部位の他にもう1つαGalなどの単糖が結合しうる部位が存在することを明らかにした。興味深いことにこの部位に結合する糖鎖の結合に転位が起こっている可能性が示唆され、congerin IIを用いた糖鎖制限酵素開発についての可能性を示した。
|