味覚は我々が豊かな食生活を享受するためになくてはならない感覚である。しかしながら味覚のうちで甘みの感知に関しては全く明らかにされていないのが現状である。申請者らは、出芽酵母において3量体Gタンパク質αサブユニットであるGPA2と相互作用する受容体をコードする遺伝子GPR1のクローニングに成功した。出芽酵母においては、代表的な栄養源であるグルコースに対する応答が細胞内cAMPレベルの上昇という形で現れる事が知られているが、GPR1遺伝子を破壊した株においては、グルコース添加後のcAMPの上昇が全く認められなかった。このことから、GPR1は、グルコースを認識して細胞内にシグナルを伝達するグルコース受容体であることが示された。 本研究においては、DNAチップを用いた包括的解析を行い、グルコース依存的に転写誘導される遺伝子のなかでGPR1介して誘導が起こる遺伝子の検索を行った。その結果、GPR1遺伝子破壊株においてアミノ酸、核酸生合成系遺伝子の転写レベルが抑制されることを明らかにした。それら遺伝子の中でARG1を選定し、そのプロモーター部位の下流にβガラクトシダーゼ遺伝子を導入したレポータープラスミドを構築し、酵母に導入した。野生株、GPR1遺伝子破壊株に導入した場合、βガラクトシダーゼ活性は、野生株で高いことが示された。本システムをもちいて哺乳類甘み受容体遺伝子のスクリーニングを行う準備を進めている。
|