研究課題/領域番号 |
12876020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 幸作 京都大学, 農学研究科, 教授 (90142299)
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研究分担者 |
河井 重幸 京都大学, 農学研究科, 助手 (00303909)
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30273519)
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キーワード | DNA生理機能 / 増殖阻害 / CpGモチーフ / 防腐剤 / DNA生存戦略 / 細菌感染症 |
研究概要 |
DNAは、情報のファイルとしての機能以外に、多くの生理機能を有することが明らかにされてきている。本研究では、細菌DNA、及びその断片が、酵母やカビの増殖を阻害することを明らかにし、それがDNA中に高頻度で散在するCpGモチーフに起因することを明らかにした。この現象は、細菌DNAが安全な食品の防腐剤として利用できることを示唆しており、その実用化に向けた研究が企業で開始されている。また、細菌DNAとその断片は、植物の種子の発芽も強力に阻害することを見出した。こうした細菌DNAの機能は、酵母、カビ、或いは植物種子の表層に細菌DNA受容体の存在を強く示唆している。そこで、酵母を対象に、細菌DNAと親和性を持つタンパク質及び取り込み装置の検索を進めてきた。その結果、酵母細胞は、増殖の極早い時期にDNAを取り込む能力を発現していることを見出した。取り込みにはポリエチレングリコールの存在が要求されるが、これは酵母の自然形質転換現象と考えられ、この現象は酵母の新規な形質転換法として有望であることを明らかにした。酵母細胞に見られたかかる現象は、植物種子の発芽時にも適用され、そこから細菌DNAが取り込まれる結果、酵母や種子の中の代謝が乱れ、増殖阻害に至ると判断された。以上の結果から、細菌はDNAを細胞外部に漏出させることによって、周囲の真核細胞に危害を加え、自己の生存を図っていることが推定された。つまり、真核生物世界の中に原核細胞が侵入し、そこで生存を可能にするためのDNA自身の生存戦略の存在が明らかになった。この原核細胞(細菌)が行使すると真核細胞(生体)世界での生存戦略の分子機構を逆手に取った細菌感染症の新規な治療法の開発が可能と考えられる。 なお、研究成果は、論文として2報投稿中、また、平成14年度日本農芸化学会で2件発表する予定である。
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