研究概要 |
本研究は、鉄酸化細菌の鉄酸化機構を遺伝子レベルで解析することを目的としており、トランスポゾンの導入によって、鉄酸化活性に変異を有しているが、硫黄酸化活性は正常に機能する変異株を取得し、導入部位の遺伝子解析によって鉄酸化に関与する遺伝子を同定しようとするものである。昨年度、広宿主域プラスミドpLOFKmgfp(mini-Tn10-kan-gfp)を、その宿主である大腸菌(Escherichia coli SM10 lambda pir)から接合により鉄酸化細菌に導入する条件検討を行った。本年度は、引き続き条件検討を行い、接合によるカナマイシン耐性のコロニーの出現を検討したが、耐性株は検出できなかった。そこで、接合による導入に代わって、エレクトロポーレーションによるプラスミドの導入を検討した。鉄酸化細菌のエレクトロコンピテント細胞を、3mM Hepes,1mM MgCl_2,10% glycerolの溶液に1-2 x 10^<10>cells/mlになるように細胞をケン濁して、エレクトロポーレーションに使用した。ケン濁液100μlにプラスミドDNAを添加し、さまざま条件下で導入を行い、カナマイシン耐性のコロニーの検出を行った。その結果、カナマイシン含有テトラチオン酸プレートでコロニーを形成する細菌が86株得られた。これらの細菌について、Fe^<2+>および元素硫黄液体培地を用いて増殖を検討した結果、鉄培地では顕著な増殖を示さないが、硫黄培地では増殖する株が1株得られた。この細菌から、染色体DNAを調製し、gfp部分の遺伝子配列に基づいて設計したプライマーを用いてPCRを行い、トランスポゾンの導入の有無を検討した結果、残念ながら増幅産物は検出されなかった。現在、この変異株が鉄培地で増殖しない原因を解析すると共に、取得しているカナマイシン耐性株について、トランスポゾン導入の有無について検討している。
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