研究概要 |
近赤外分光による脳血流量測定法,及び唾液コルチゾールの酵素免疫測定法を使い,食品タンパク質及びその分解物が持つストレス感受性や学習記憶など,ヒトの脳機能における調節作用を検討した。大豆タンパク質(タンパク質),その酵素分解物(ペプチド),及び食物繊維(プラセボ)を各々,試験2時間前に,被験者(N=10,22〜25才,男性)に飲んでもらい,人工気候室で測定した。被験者に計算,文字消去,単純反応,弁別反応,短期記憶,音・音楽聴取など,計9種の作業を課し,その間の脳血流量,脈拍,血圧を測定した。また,作業前後に唾液を採取した。計算においては,タンパク質摂取群で作業開始直後に酸素結合型ヘモグロビン濃度の急激な増加がみられた。ペプチド群ではその増加は若干小さく,プラセボ群では急激な増加はみられなかった。短期記憶においても,タンパク質群では同様な結果が得られた。しかし,ペプチド群では濃度増加速度が遅く,タンパク質群よりも低濃度でプラトーに達した。プラセボ群ではさらに低レベルでプラトーに達した。その他の作業でも,脳血流量には違いがみられた。被験者の唾液コルチゾールレベルは,いずれの群でも低下したが,タンパク質とペプチド群ではとくに大きく低下した。以上の結果から,食品タンパク質またはその分解物の摂取によって,作業課題に対する脳血流量とストレスホルモンレベルの変化に違いがみられ,従って脳機能が調節を受けている可能性が示された。
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