1.マイクロサテライトDNA領域に着目し、外生菌根菌ハナイグチの菌根及び菌糸のDNAからジェネットを識別出来るような多型性の高いマイクロサテライトDNAマーカー作成した。このマーカーは、ハナイグチ種に特異的で種内多型性が高く、調査地点近辺のジェネットを特異的に識別することが出来た。 2.子実体発生位置を中心に菌根及び菌糸を含む土壌をサンプリングし、作成したDNAマーカーを用いて地下における同一ジェネットに属する菌根及び菌糸の土壌中分布を明らかにした。 3.その結果、以下のことが明らかになった。(1)ハナイグチ子実体直下には、子実体と同じジェネットの菌根および菌糸が分布している。(2)その分布は、それほど広い領域ではなく、子実体直下に限定されている。(3)一年前に子実体が発生した位置では、直下に死んでしまった菌根付き根系が見られ、ハナイグチのDNAは全く検出されない。 4.これらのことから、(1)ハナイグチの場合、子実体の発生位置と地下ジェネットの分布とには一定の相関が見られること、(2)ハナイグチのジェネットは、子実体形成後衰退すること、(3)従って、ハナイグチの菌根および菌糸体からなる地下ジェネットは、年単位で大きく変動していることが解った。 5.この様な地下ジェネットの解析は、世界で初めての研究であり、これまでに知られていなかった野外における外生菌根菌の動態の一側面が明らかになった。
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