研究概要 |
昨年度は附属演習林において木材を伐採することにはじまり,どのように利用され,廃棄されるかを考える実体験を重視したカリキュラムを卒業論文研究ならびに修士論文研究の一環として研究室セミナーの形で行った。しかし,木材利用については掲示板やベンチなどを製作する程度に留まっていた。森林資源の循環的利用ということを理解するためには,木材の主用途である建築材料としての利用を行うべきであると思われる。また,森林を伐採して丸太から板や柱材へと加工する際に排出される残材の利用を通して,さらに循環資源としての理解が深まると考えて,屎尿の分解促進に木屑を用いるコンポストトイレを建設することにした。そこで,地域の建築設計士の協力を得て付属演習林に仮設のトイレ小屋を建造することにした。 2001年10月より学生有志を募り休日を利用してコンポストトイレ小屋の基礎工事を演習林内にある自然石などをできるだけ利用して行った。基礎工事は年内に完了して,冬季は建家に使用するヒノキの間伐材の伐採と葉枯らしを行っている。 また,本年度は2年生後期に「森林資源学実践実習」という正課のカリキュラムの中に取り入れた。この実習は,10月末と12月末にそれぞれ1週間連続して4〜5人の少人数で行うものである。このなかでコンポストトイレの建屋用ヒノキ間伐材を冬季の間葉枯らしするための伐採を行うとともに,端材の有効利用としての食器作りを行った。実習のまとめとしての発表から,木材は建築材料,什器など幅広い用途があるということ,また,環境問題などを考える以前に木で物を作ることの楽しさを学び取ったことがうかがえた。 このような活動を通じて,林内での作業を行う際に昼食にコンビニエンスストアの弁当を買って持っていくのではなく,自分たちで薪を使って料理を行うなどの変化が見られた。仮設コンポストトイレ小屋の完成は2002年夏の見通しであるが,今まででも森林資源の循環資源材料としての理解度が向上しただけでなく,森林と人間の生活との関係に対する考えが深まっているように思われる。
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