研究概要 |
1.シズクガイの種特異的プライマーの設定 予備実験でもっとも良好な増幅がみられたF2-R3のプライマーの組み合わせは様々な生物で利用可能な有用なプライマーであることが判った.このプライマーを用いてシズクガイの成貝から得られたDNAを増幅したところ約830bpの増幅産物が得られ,既知の二枚貝における同領域のサイズとほぼ同じであったことから,目的領域が増幅されたと考えられた.これらの増幅産物を4塩基認識制限酵素HaeIIIで処理しRFLP分析を行った結果,種の識別が可能であることが明らかとなった. 2.野外調査によるベントスおよびプランクトン試料の収集と画像ファイルの作成 舞鶴湾および広島県百島海域において定点調査を行い,二枚貝成体および浮遊幼生の出現状況を調べた.舞鶴湾では,11月以降浮遊幼生の出現が多くなり,1月以降堆積物中に着底直後と思われる若齢個体が出現し始め,3月の時点で出現量が最大となった.一方,百島海域では,常に多毛類が卓越し,二枚貝の大量の加入は確認されなかった.これまでに得られている二枚貝幼生をタイプ分けし,それぞれについて画像ファイルを作成した. 3.今後の課題 今後は,シズクガイのPCR増幅産物の塩基配列を決定し,シズクガイに対して種特異的プライマーを設計することで,シズクガイのみを迅速に識別する手法を確立する必要がある.また,F3-R2のプライマーが,様々な生物に利用可能であったことから,舞鶴湾に出現するシズクガイ以外の二枚貝浮遊幼生にも適用する. 一方,プランクトン幼生のサンプルのなかにはPCRで増幅しないものを少数存在したが,このことはサンプル処理に起因すると推測される.幼生のサンプル処理をさらに改良し,PCRの増幅をより確実にする必要がある.
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