研究概要 |
本研究においては、マダイ鯉組織より低分子の殺菌活性ペプチドを単離・精製し、それらの化学構造を決定するとことを目的として検討を行った。マダイ鯉組織より調製した酸抽出液をSEP-PAK C18カートリッジ,SP-Sephadex C25によって粗分画し、ゲル濾過HPLC,逆相HPLC,イオン交換HPLCにより、P1,P2-2,P3の三つの殺菌活性ペプチド画分を得た。これら三つの画分のN末端アミノ酸配列分析、各ペプチド画分のlysyl endopeptidase消化産物の分子量測定により、全アミノ酸配列を推定した。また、3種のペプチドについてC末端アミド化、非アミド化合成ペプチドを作製し、陽イオン交換HPLC,逆相HPLCにより分析した結果、いずれのペプチドもC末端がアミド化されていることが明らかとなった。これらの結果より、三種類の殺菌活性ペプチドP1,P2-2,P3の一次構造を決定し、それぞれchrysophsin-1,-2,-3と命名した。chrysophsin-1,-2は25残基、chrysophsin-3は20残基からなる新規の強塩基性ペプチドであり、円二色性スペクトルの分析結果より、疎水性環境下ではαヘリックス構造を形成することが明らかとなった。次いで、合成chrysophsin-1,-2,-3を用い、魚類病原性細菌10菌株に対する殺菌活性を測定した。その結果、10菌株中7-8菌株に対して有意な殺菌活性を示したことから、chrysophsin-1,-2,-3は病原性細菌に対して広範囲な活性スペクトルを示すことが明らかとなった。合成chrysophsin-1,-2,-3の殺菌活性におよぼすNaClの影響を検討した結果、NaCl濃度が0.32M以上になると、殺菌活性が低下した。また、合成chrysophsin-1,-2,-3はヒト及びウサギの赤血球に対し、溶血活性を示すことが明らかとなった。合成chrysophsin-1とKLHのコンジュゲーを抗原としてウサギに免疫し、抗血清を作製した後、合成chrysophsin-1固定化カラムにより抗体を精製した。精製抗体を一次抗体として用い、マダイ鯛組織におけるchrysophsin-1の局在について免疫組織化学的に検討を行った結果、二次鯉弁の表面に分布する被蓋細胞と基底部の細胞に特異的な染色が確認された。
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